松と発酵について
about

松の恵みと発酵の力で
若々しく輝く健やかな毎日を。

松の強靭な生命力

アメリカ、カリフォルニア州にあるホワイトマウンテンには、メトシェラと 呼ばれる世界最古のブリッスルコーンパインが生息しています。969 歳まで 生きたとされる旧約聖書の登場人物にちなんで名付けられたこの松は、イン ヨー国立森林公園の “Forest of Ancients” 地区の中にある “Methuselah Grove” で、樹齢なんと 4800 年! 標高約 3,300m、強風が吹き荒れ、強 い紫外線、乾燥、冬は -30 度の極低温と、およそ生物に適していない過酷な 環境で悠久の時を生きるブリッスルコーンパイン。和名を「イガゴヨウマツ」 といいます。

松、地球最古の
生命

2008年4月18日。スウェーデンのウーメオ大学は17日、同国ダラルナ地方の山岳地帯で樹齢1万年近い(※遺伝物質の年代は、米フロリダ州マイアミにある研究所で、放射性炭素年代測定によって算出された)現存する世界最古のオウシュウトウヒ(マツ科トウヒ属の針葉樹)を発見したと発表しました。

 同大自然地理学の研究チームによると、このオウシュウトウヒは2004年、同国の研究チームがダラルナ地域で樹種の個体数調査を行っていた際、Fulu山で発見されました。 この木は、9550年前(測定は根の部分)の遺伝物質を持っており、つまり、およそ紀元前7542年に根付いたことになるのです。根を下ろしたのは、最後の氷河期を終え、氷河がスカンジナビアから消えて間もなくのこと。森林が生育しにくいツンドラ気候を低木のまま乗り越え、過去100年の間に今の大きさまで成長したと言われています。

 米誌ナショナル・ジオグラフィックによると、標高910m地点でハイマツのような低木の根から、幹を立ち上げることを繰り返してきたとみられます。現在ある直立の幹は、周辺の夏の気温の上昇で1940年代初頭から伸びたといわれています。鹿児島大の鈴木英治教授(植物生態学)は「横に次々と枝が出ており、1個体が生き続けて古い部分が9000年を超したということのようだ。木がゆっくり成長するスウェーデンの山の環境なら、このような発見があってもおかしくない」とのこ  

 

 これまでは、アメリカのブリッスルコーンパインが世界最古とされてきましたが、この発見により記録は更新。またしても、マツ科の植物がその強靭な生命力の神秘をみせてくれたのです。

※『Old Tjikko』と名付けられた、高さ約5メートルのオウシュウトウヒ(マツ科トウヒ属の針葉樹)。低木が広がるスウェーデンのフルフジェーレット山脈にある、世界最長寿およそ10000歳の生命。樹齢の割に極端に小さいのは、クローンの木で地表から上の部分ではなく根の部分がおよそ10000歳だから。

和漢で愛される松

松の名前の由来ですが日本では古くから神聖な木として考えられていたようで、神が松の木に天から降りると考えられており、それを待つ(マツ)という説と、松の葉が二股に分かれている様子から股(マタ)が長い時を経て転訛して、マツ(松)という名がついたという説があります。 また、松竹梅では最上級を表し、日本全国の松原には、天女が舞い降りたと言われる羽衣伝説などが伝わっています。

 松といえば「松ぼっくり」ですが、松ぼっくりを形成する前の種子を松の実(生薬名:海松子)と言い、これは非常に栄養価が高く、多量の脂質が含まれており、主な成分が不飽和脂肪酸で、他にピノレン酸、ビタミンE、ミネラルなどが豊富に含まれています。 薬膳料理(韓国料理のサムゲタン)やイタリア料理(バジルソース)、中華料理などの材料としても珍重されており、主に朝鮮五葉松から採取します。不飽和脂肪酸は動脈硬化予防、コレルテロール分解作用が期待できます。ビタミンEは美肌効果、老化防止効果が期待できます。

また、食用ではありませんが中国では仙人が松葉を食していたと言われ、日本では修験者が厳しい山行の合間に松葉を食べて栄養補給を行い、山行を乗り切ったと言われます。  神農本草経には長生きが出来る薬草として「一名松膏。一名松肪。味苦温。生山谷。治癰疽悪瘡。頭瘍白禿。疥ソウ風氣。安五藏。除熱。久服輕身不老延年。」と書かれています。16世紀の明の時代に編纂された「本草網目」にも類似する記述があり、漢方の本場でもその強力な滋養が重用さえてきた事がわかります。
 松葉にはαガンマーピネン、カンフェン、ヘランドレン、ボルネオールなどの精油成分とユルペリ酸、サビナ酸などの蝋質とビタミンAとビタミンCとビタミンK、ケルセチンや松ヤニの成分であるピネン、ジペンテン、リモネンなどのテルペン油が多く含まれています。ケルセチンとビタミンCには脳梗塞や脳卒中などの脳障害予防作用、高血圧予防作用と血管壁を強化作用があると言われます。ピネン、ジペンテン、リモネンなどのテルペン油は血中コレステロールを取り除く作用があります。また、中国の本草学史上最大の著書「本草網目」には、松葉は以下の様に紹介されています。 「風湿瘡、毛髪を生じ、五臓を安んじ、中を守り、餓えず、天年を延べる。」 「リューマチや関節痛に効果があり、髪の毛が生え、内臓の機能を整え、胃腸を保護して食欲増進を促し、長寿を保つことが出来る。」

 そして、松脂にはモノテルペン類とジテルペン酸化化合物が含まれており、生松脂を水蒸気蒸留するとテレビン油が採取できます。テレビン油は神経痛やリューマチの塗布剤として用いられます。

古代から酒づくりなどに使われた
「神の恵み」の発酵

発酵=「fermentation」は、ラテン語で「湧く」という意味の「fervere」を語源としています。これはおそらく、アルコール発酵のとき、炭酸ガスが泡のように盛り上がる姿から名づけられたのでしょう。
 大気中に浮遊する酵母によってぶどうが自然発酵するのを目の当たりにした古代人たちは、やがて自然現象としての「発酵」を、日常生活に取り入れるようになりました。 メソポタミア地方では、つぶしたぶどうの皮や種子、茎を発酵させてワインを造ったのに続き、紀元前17世紀~14世紀頃のギリシャでも同様に、摘み取ったぶどうを袋に入れ、足で踏みつぶして絞ったジュースを自然発酵させる酒造りが行われています。また。紀元前3500年頃の遺跡「モニュマン・ブルー」にも、パンの発酵を利用した酒造りの過程が、絵と文字とで記録されています。
 当時の人々にとって、「発酵」の仕組みやメカニズムなどは知る由もありませんでしたが、自然発酵がもたらしてくれる食べ物のおいしさには誰もが魅了され、それを生み出すためにさまざまな工夫を凝らしてきたことは想像に難くありません。穀物やぶどうなどの「発酵」を通じて、人類は遙か昔から変化に富んだ食文化をはぐくみ、現在に至るまで豊かな味の世界を広げ続けているのです